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代表的な認知症

代表的な認知症

最終更新日:2026年8月27日

約18分で読めます

認知症は、記憶や判断、言葉、行動などの力が以前より低下し、日常生活に支障が生じた状態です。原因によって初期症状、検査、治療上の注意が変わります。このページでは、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症の特徴と違い、診断、治療、生活上の備えをまとめます。

まず知っておきたい認知症の全体像

認知症という言葉が表すもの

認知症は、脳の病気や障害によって認知機能が以前より低下し、その変化が自立した生活に影響している状態を表します。認知機能には、出来事を覚える力だけでなく、注意を向ける力、計画を立てる力、言葉を理解して伝える力、場所や物の位置関係を捉える力、社会的な場面で判断する力も含まれます。

日常生活への影響が診断上の重要な境界です。たとえば、約束を忘れても手帳で補えている段階と、支払いや服薬に継続的な手助けが必要になった段階では、評価が異なります。認知機能検査の得点だけで診断を決めず、以前からの変化、本人の生活歴、家族が見た様子を組み合わせます。

原因となる病気を見分ける意味

代表的な原因には、アルツハイマー病、レビー小体病、脳血管障害、前頭側頭葉変性症があります。初期に目立つ症状が異なり、役立つ検査、使う薬、避けたい薬、安全対策も変わります。たとえば、具体的な幻視や寝言に伴う激しい動きはレビー小体型認知症の手がかりとなり、人格や社会的行動の変化が記憶低下より先に目立つ場合は前頭側頭型認知症を検討します。

一方、症状には重なりがあります。高齢になるほど複数の脳病理が同時に存在しやすく、典型像に当てはまらない人も少なくありません。病名を急いで一つに固定するより、現時点で確かなことと残る可能性を分け、経過を追って見直す姿勢が安全です。

日常生活に現れやすいサイン

認知症の初期変化は、診察室よりも毎日の習慣に表れやすいものです。次のような変化が以前より増え、繰り返し起こるかを確認します。

記憶・判断・言葉に現れる変化

  • 聞いたばかりの予定や会話そのものを忘れ、同じ質問を何度もする
  • 財布や鍵を置いた場所が分からず、探す時間が著しく増えた
  • 請求書、通帳、振り込み、暗証番号の管理で間違いが増えた
  • 薬を飲み忘れる、または同じ薬を重ねて飲むことがある
  • 慣れた料理や家事でも手順が混乱し、途中で止まる
  • よく知る道で迷う、駅や建物の位置関係が分かりにくい
  • 言葉が出にくい、言葉の意味が分かりにくい、会話がかみ合いにくい
  • 仕事の段取り、機器の操作、予定変更への対応に以前より時間がかかる

行動・睡眠・体の動きに現れる変化

  • 実際にはない人や動物が見えると具体的に話す
  • 日によって、または一日の中で反応や理解力が大きく変わる
  • 寝ながら大声を出す、夢に合わせて手足を動かす
  • 歩幅が小さくなり、動作が遅い、転びやすい
  • 配慮を欠く言動、同じ行動の反復、食べ物の好みの大きな変化が現れた
  • 関心や意欲が薄れ、身だしなみや家事を気にしなくなった

当てはまる項目の数だけで認知症の診断は決まりません。疲労、睡眠不足、うつ状態、薬の作用、感染症などでも似た変化が起こります。始まった時期、進み方、生活への影響を含めて医療機関で確認します。

加齢によるもの忘れとの違い

加齢によるもの忘れでは、名前や置き場所を一時的に思い出せなくても、時間や手がかりによって思い出せることが多く、生活の自立は保たれます。認知症による記憶障害では、出来事を記録する働き自体が低下し、「昨日来客があった」という体験全体が抜けることがあります。その結果、確認や支払いを何度も行うなど、生活上の問題につながります。

ただし、初期には境界がはっきりしません。軽度認知障害(MCI)の段階では客観的な低下があっても、工夫しながら自立を保てます。また、本人より家族が先に変化へ気づく病型もあれば、本人の心配が強く検査は正常範囲という場合もあります。「忘れた内容」「頻度」「以前との違い」「自立への影響」を具体的に記録すると、判断に役立ちます。

4つの代表的な認知症は何が違うのか

4つの病型は、初期に目立ちやすい症状から見分ける手がかりを得られます。次の表は典型例を簡潔に示したもので、実際には症状が重なる場合や、複数の病理が併存する場合があります。

病型初期に目立ちやすい変化
アルツハイマー型認知症新しい出来事を覚えにくい、同じ質問、時間や場所の混乱
レビー小体型認知症認知機能の変動、具体的な幻視、レム睡眠行動異常、パーキンソン症状
血管性認知症注意・処理速度・計画力の低下、歩行や麻痺など病変部位に応じた症状
前頭側頭型認知症社会的行動や人格の変化、常同行動、食行動の変化、言語の障害

これは診断の目安です。記憶障害から始まらないアルツハイマー病や、幻視が目立たないレビー小体型認知症もあり、表だけで病型を決めることはできません。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、アルツハイマー病の脳病理を背景に認知機能が低下し、生活の自立へ支障が生じた状態です。典型的には、新しく経験したことを覚えて保つ「エピソード記憶」が早くから低下します。同じ質問、予定の失念、物の置き場所が分からないといった変化から始まり、時間の見当識、言葉、空間認知、判断へ影響が広がります。

脳ではアミロイドβとタウというたんぱく質に関連する変化がみられますが、臨床症状は脳病理だけで一律に説明できません。若い年代では、記憶より視空間認知、言語、計画力の低下が先に目立つ非典型例もあります。診断では緩やかな進行、認知機能の型、MRIなどの画像を確認し、治療選択によってはアミロイドPETや脳脊髄液などでアミロイド病理を確認します。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、αシヌクレインというたんぱく質を主成分とするレビー小体に関連する病気です。注意や覚醒の状態が大きく揺れる認知機能の変動、形のはっきりした繰り返す幻視、動作の遅さや筋肉のこわばりなどのパーキンソン症状、夢の内容に合わせて声を出したり動いたりするレム睡眠行動異常が中核的な手がかりです。

初期には記憶検査が比較的保たれ、注意、実行機能(計画して行動する力)、視空間認知の低下が目立つことがあります。立ちくらみ、便秘、排尿の問題などの自律神経症状、嗅覚低下、転倒、抑うつを伴う場合もあります。幻視だけで診断せず、せん妄、目の病気、薬剤、睡眠障害も確認します。抗精神病薬に強い副作用が出る人がいるため、病型の把握が治療安全性に直結します。

血管性認知症

血管性認知症は、脳梗塞、脳出血、小血管病などの脳血管障害が認知機能低下へ大きく関与し、生活に支障が出た状態です。新しいVasCog-2-WSO基準では、軽度から認知症段階までを血管性認知機能障害として連続的に捉え、認知機能低下と脳血管病変の関係を臨床経過、診察、画像で評価します。

注意の持続、情報処理の速さ、計画や切り替えの力が低下しやすく、病変の部位によって記憶、言語、視空間認知にも影響します。片側の手足の動かしにくさ、構音障害、歩行障害、感情の調整しにくさを伴うことがあります。脳卒中ごとに階段状に悪化する例がある一方、小血管病では緩やかに進むこともあります。画像に白質病変があるだけで原因と決めず、病変の程度や部位、ほかの病理の併存を検討します。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、前頭葉や側頭葉を中心とする神経変性により、行動、人格、社会的判断、言語が早期から変化する病型です。行動型では、場に合わない言動、共感の乏しさ、意欲低下、決まった道順や行動へのこだわり、甘い物への偏りや過食などが目立ちます。記憶が比較的保たれる時期でも、仕事や家庭内の役割に大きな影響が出ます。

言語症状が中心となる原発性進行性失語では、言葉の意味が分からなくなる、発話が努力的になるなど、型によって現れ方が異なります。うつ病、双極症、発達特性、依存症などの精神科領域の状態と似ることがあり、以前の人格や行動からの持続的な変化と進行性を確認します。運動ニューロン病を伴う場合もあり、筋力低下、筋肉のやせ、飲み込みにくさにも注意します。

複数の原因が重なる混合病理

実際の認知症では、アルツハイマー病と脳血管障害、アルツハイマー病とレビー小体病など、複数の原因が重なることがあります。特に高齢者では混合病理が珍しくなく、症状が教科書的な一型にそろわない理由になります。たとえば、典型的な記憶障害に加えて変動や幻視がある場合、アルツハイマー病とレビー小体病の併存を考えます。

診断名を一つに絞り切れない段階でも、治療できる課題を整理できます。血圧や糖尿病の管理、服薬の安全化、睡眠の評価、家族支援などは、病理が混在していても重要です。検査結果と症状が一致しないときは、検査の限界と混合病理の両方を考え、経過の中で診断を更新します。

認知症の診断で医師が確認すること

認知症の診断は、認知機能低下の存在、日常生活への影響、原因となる病気の三段階で考えます。一度の短い検査より、以前の状態からどのように変わり、どの機能に手助けが必要になったかが重要です。

本人と家族から確認する経過と生活機能

医師は「いつから」「最初に何が」「どの速さで」変わったかを確認します。数年かけた緩やかな記憶低下、脳卒中後の変化、数週間以内の急速な悪化では、考える原因が異なります。家事、買い物、金銭、服薬、電話、交通機関、仕事など、複雑な日常活動を一人で続けられるかも尋ねます。

本人と家族の評価が食い違うこと自体も情報です。病識(自分の変化を認識する力)が低下しやすい病型がある一方、不安や抑うつにより本人の訴えが強くなる場合もあります。学歴、職歴、使用言語、視力、聴力、運動障害を踏まえないと検査結果を誤って解釈するため、生活背景も確認します。

認知機能検査・診察・血液検査の役割

認知機能検査では、記憶だけでなく注意、実行機能、言語、視空間認知などを評価します。短いスクリーニング検査は全体像を把握する入口であり、高得点でも特定領域の低下を見逃すことがあります。反対に、緊張、難聴、疲労、教育歴の影響で低く出ることもあります。必要に応じて詳しい心理検査を組み合わせます。

神経学的診察では、眼球運動、筋肉のこわばり、歩行、反射、麻痺などを確認します。血液検査は甲状腺機能、ビタミン欠乏、感染、肝臓・腎臓の機能、電解質など、認知機能に影響する身体要因を探すために用います。薬の一覧、サプリメント、飲酒量も診断の一部です。

画像検査とバイオマーカーで分かること

CTやMRIは、脳梗塞、脳出血、慢性硬膜下血腫、脳腫瘍、正常圧水頭症などを調べ、萎縮や血管病変の分布を確認します。画像だけで認知症の有無を決めることはできず、年齢相応の変化もあります。SPECTやFDG-PETは脳血流・代謝の分布、DATスキャンやMIBG心筋シンチはレビー小体型認知症を支持する所見を調べる際に使われます。

アミロイドPETや脳脊髄液のバイオマーカーは、アルツハイマー病理を確認するために役立ちます。血液バイオマーカーも進歩していますが、採血項目一つで全ての認知症を診断する仕組みではなく、対象、測定法、前後の確率を考えた解釈が必要です。検査は「結果によって診断や治療がどう変わるか」を考えて選びます。

似た症状を起こす状態との区別

認知機能低下には、早く対応すると改善を期待できる原因が含まれます。進行性の認知症らしく見えても、急性疾患、薬剤、睡眠、気分、代謝の影響を並行して調べます。

急に混乱する「せん妄」との違い

せん妄は、注意や意識の状態が数時間から数日で急に変化し、一日の中でも大きく揺れる状態です。感染症、脱水、便秘、痛み、手術、薬剤などをきっかけに起こります。認知症がある人はせん妄を起こしやすく、両方が重なることもあります。いつもと違う混乱、眠気、興奮が急に現れた場合、認知症の進行と考えて様子を見るのではなく、身体疾患を含む迅速な評価が必要です。

うつ病・薬剤・睡眠・身体疾患の確認

うつ病では集中力、記憶の取り出し、意欲が低下し、本人が強く「頭が働かない」と感じることがあります。認知症とうつ病は併存するため、気分、興味、睡眠、食欲、自責感、希死念慮も確認します。睡眠不足や睡眠時無呼吸症候群は日中の注意力を下げ、レビー小体型認知症と関連するレム睡眠行動異常は別の評価が必要です。

抗コリン作用を持つ薬、睡眠薬・抗不安薬の一部、鎮痛薬、複数薬剤の組み合わせ、過量の飲酒は認知機能や転倒へ影響します。甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠乏症、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫なども鑑別します。処方薬を自己判断で中止すると離脱症状や原病悪化が起こるため、医師・薬剤師と調整します。

治療は病型と困りごとに合わせて組み立てる

治療の中心は、原因疾患に応じた薬物療法、身体疾患の管理、生活環境の調整、本人と家族への支援を組み合わせることです。薬の有無だけで治療を捉えず、安全、役割、楽しみ、介護負担まで具体的な目標を決めます。

生活環境と支援を整える治療

予定を一つのカレンダーへ集約する、薬を一包化して確認者を決める、迷いやすい場所に短い表示を置くなど、失われた力を環境で補います。本人ができる作業まで奪うと活動量や自信が下がるため、「見守りでできること」「一部を手伝うこと」「代行すること」を分けます。

運動、社会的交流、聴力・視力の補正、睡眠の改善、栄養状態の確認は、生活機能と健康を保つ土台になります。血管性認知症では、脳卒中再発を防ぐため、高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動、喫煙などを個別に管理します。これらは認知症を確実に元へ戻す方法という位置づけではなく、追加の障害を減らし生活を支える対応です。

認知症症状に用いる薬

アルツハイマー型認知症では、コリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬が、認知機能や生活機能の低下を一定期間緩やかにする目的で用いられます。病期、心拍数、胃腸症状、体重、失神、併用薬を踏まえて選びます。効果は個人差が大きく、開始後は本人・家族が重視する生活目標と副作用の両方を見直します。

レビー小体型認知症では、認知機能や幻視などに対してコリンエステラーゼ阻害薬を検討することがあります。パーキンソン症状への薬は幻視や混乱を悪化させる場合があり、症状間のバランスを見ます。血管性認知症では脳血管リスクの管理が中心で、アルツハイマー病の併存などを踏まえて認知症治療薬を判断します。前頭側頭型認知症では、認知機能を改善する承認薬が確立しておらず、行動症状への環境調整と個別の対症療法が中心です。

早期アルツハイマー病の抗Aβ抗体薬

レカネマブとドナネマブは、アルツハイマー病によるMCIまたは軽度認知症のうち、アミロイド病理が確認された人を対象に進行を抑える目的で使う抗Aβ抗体薬です。失われた記憶を回復させる薬ではなく、臨床試験では集団平均として低下の速度を緩やかにしました。中等度以降の認知症や、症状がない人への投与開始は国内の適応に含まれません。

治療前後のMRI、定期的な点滴、家族・介護者を含む安全管理が必要です。アミロイド関連画像異常(ARIA)と呼ばれる脳のむくみや微小出血、点滴時反応などがあり、頭痛、意識の変化、けいれん、視覚症状、麻痺などが出た際は速やかな評価を要します。抗凝固薬の使用やMRI所見などで適さない場合もあります。PMDAの最新の電子添文と最適使用推進ガイドラインに沿い、期待できる効果、負担、リスクを比較して選択します。

病型ごとに異なる治療上の注意

興奮、幻視、妄想、不眠が現れたときは、まず痛み、便秘、感染、騒音、睡眠、介護場面の行き違いを探します。非薬物的な調整で足りない場合に薬を検討しますが、高齢者の認知症に対する抗精神病薬には脳卒中、死亡、鎮静、転倒などのリスクがあります。レビー小体型認知症では過敏反応が起こり得るため、特に慎重な選択と観察が必要です。

前頭側頭型認知症の常同行動や脱抑制は、叱って修正しようとすると対立が強まりやすく、行動のきっかけを減らし、安全な代替行動へ置き換える方法が役立ちます。血管性認知症では、急な悪化が新たな脳卒中の可能性を示すことがあります。病型ごとの注意を家族や支援者の間で共有します。

今後の経過と定期的な見直し

変性性の認知症は一般に進行性ですが、速度と症状の順番には大きな個人差があります。数か月の変化だけで将来の時期を正確に予測することは困難です。感染症、入院、環境変化、睡眠悪化、薬剤によって一時的に機能が下がり、原因への対応後にある程度戻る場合もあります。

定期診察では、検査得点だけでなく、服薬、転倒、栄養、睡眠、運転、金銭管理、介護負担を見直します。診断初期は本人が意思を伝えやすい時期です。今後希望する医療や介護、支援を頼みたい人、財産管理について少しずつ話し合うと、将来の選択を本人の価値観に近づけやすくなります。

安全と自立を両立する生活上の対応

薬・お金・火・外出の安全を整える

安全対策は、できなくなってから一度に制限するより、失敗が軽い段階で仕組みを足す方が受け入れやすくなります。服薬カレンダーや薬局の一包化、支払い通知の共有、詐欺電話対策、IH機器や自動消火装置、位置情報を確認できる手段などを、本人の同意と生活に合わせて選びます。

道迷い、転倒、火の不始末が起きた際は、「気をつける」という約束だけに頼らず、起きた場面を分析します。視空間認知の低下、注意の変動、歩行障害など原因に応じて環境を変えます。運転は認知機能、視空間認知、判断、病識、実際の事故や違反を総合し、免許制度に沿って早めに相談します。

家族の関わり方と仕事・社会参加

本人が間違えた事実を何度も証明するより、困りごとの解決を優先します。短い文で一つずつ伝える、選択肢を絞る、急な予定変更を減らすと理解しやすくなります。前頭側頭型認知症の行動変化やレビー小体型認知症の幻視には、病気の症状という理解が家族の対応を変えます。

診断後も、能力に合う役割や活動を続けることは生活の質につながります。働いている人は、ミスが重大事故につながる業務、夜勤、複雑な金銭管理などを整理し、業務調整や休職を検討します。介護保険、地域包括支援センター、成年後見制度などは条件と本人の希望に合わせて利用します。若年性認知症では、障害年金、傷病手当金、就労支援など高齢者向け介護以外の制度も検討対象になります。

通常の外来を待たずに対応する症状

次の変化は、通常の予約日を待たず、救急要請を含む迅速な対応を検討してください。

  • 顔や手足の片側が急に動かしにくい、ろれつが回らない、急に言葉が出ない
  • 数時間から数日で意識や注意が変わり、反応が鈍い、または激しく興奮する
  • 突然の激しい頭痛、けいれん、意識消失、新しい歩行不能がある
  • 発熱、息苦しさ、強い脱水、食事や水分を取れない状態を伴う
  • 自傷・他害の具体的なおそれ、行方不明につながる切迫した行動がある

脳卒中、感染症、低血糖、薬物中毒、頭部外傷など、時間を争う原因が隠れることがあります。抗Aβ抗体薬の治療中に新しい神経症状が出た場合も、治療施設へ速やかに連絡します。

受診の目安と当院での評価

受診を考える具体的なタイミング

同じ質問、薬やお金の間違い、道迷い、仕事の段取りの低下などが以前より増えた時点が相談の目安です。本人の自覚が乏しくても、家族や同僚が持続する変化を感じる場合は情報に価値があります。症状が軽い段階でも、生活上の危険、治療可能な原因、MCIか認知症かを整理できます。

受診前に、最初の変化と時期、具体的な失敗、進む速さ、既往歴、現在の薬、飲酒、睡眠、運転状況をメモしてください。可能であれば、日常を知る家族の同席や事前情報が役立ちます。

大井町とうまクリニックでの診かた

大井町とうまクリニックのもの忘れ・認知症外来では、発症時期、進行の速さ、認知機能、日常生活、行動・心理症状、身体疾患、服薬、睡眠を組み合わせて評価します。心理検査・認知機能検査と採血は院内で実施し、MRIは連携医療機関で行います。必要性に応じて、SPECT、DATスキャン、MIBG心筋シンチ、脳脊髄液検査、アミロイドPETを専門医療機関へ紹介します。

病型は一回の診察で確定しない場合があります。検査結果とその後の経過を照らし、診断、薬物療法、生活上の対応、地域支援を見直します。お薬手帳、過去の検査結果や画像データがあればお持ちください。

代表的な認知症についてのよくある質問

認知症は遺伝しますか?

多くの認知症は、一つの遺伝子だけで発症が決まる形ではなく、年齢、複数の遺伝的要因、血管リスク、環境などが関係します。一方、若年発症の一部のアルツハイマー病や前頭側頭葉変性症には、家族内で受け継がれる遺伝子変化があります。若い年齢で複数世代に似た発症がある場合は、遺伝カウンセリングを含め専門的に検討します。

症状は必ず同じ順番で進みますか?

同じ病型でも症状の順番と速度は人によって異なります。アルツハイマー病でも言語や視空間認知から始まる型があり、血管性認知症の経過は病変の種類によって変わります。急な悪化は病気の自然経過と決めず、せん妄や脳卒中などを確認します。

薬を始めれば元の状態に戻りますか?

変性性認知症の薬には、症状を一定期間支える薬や、早期アルツハイマー病の進行速度を緩やかにする薬があります。失われた機能を完全に元へ戻す効果は示されていません。生活上の目標、副作用、通院や検査の負担を含め、効果を定期的に評価します。

診断されたら直ちに運転をやめる必要がありますか?

認知症と診断された場合は、安全のため運転を中止し、速やかに都道府県警察の安全運転相談窓口へ相談してください。道路交通法上、認知症は運転免許の取消し・停止等の対象です。一方、MCIや、免許更新時の認知機能検査で「認知症のおそれ」と判定された段階は認知症の確定診断と同一ではなく、医師の診断と公安委員会の手続きが必要です。

本人が受診を嫌がるとき、家族はどうすればよいですか?

「認知症の検査」と正面から説得するより、薬の整理、睡眠、転倒、健康診断など本人が困っているテーマから受診を提案する方法があります。家族だけで経過を医療機関へ相談し、受診につなげる言い方や緊急度を整理することも選択肢です。切迫した危険がある場合は地域包括支援センターや救急機関と連携します。

一人暮らしを続けられますか?

診断名だけで一人暮らしの可否は決まりません。服薬、食事、火の管理、金銭、外出、緊急時の連絡がどの程度保たれているかを個別に評価します。見守り、配食、訪問支援、金銭管理の補助を組み合わせて継続できる人もいます。危険が増えたときに住まいを見直す基準を、本人と支援者で先に決めておくと対応しやすくなります。

参考文献・公的資料

  1. 日本神経学会監修.認知症疾患診療ガイドライン2026.医学書院,2026.ISBN 978-4-260-06553-5
  2. 厚生労働省.認知症関連ガイドラインについて
  3. World Health Organization. Dementia, 2026
  4. National Institute on Aging. What Is Alzheimer’s Disease? 2025
  5. McKeith IG, et al. Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies: Fourth consensus report. Neurology. 2017;89:88-100. doi:10.1212/WNL.0000000000004058
  6. Rascovsky K, et al. Sensitivity of revised diagnostic criteria for the behavioural variant of frontotemporal dementia. Brain. 2011;134:2456-2477. doi:10.1093/brain/awr179
  7. VasCog-2-WSO Criteria Consortium. Revised Diagnostic Criteria for Vascular Cognitive Impairment and Dementia. JAMA Neurol. 2025;82:1103-1112. doi:10.1001/jamaneurol.2025.3242
  8. 医薬品医療機器総合機構.最適使用推進ガイドライン(レカネマブ、ドナネマブ)
  9. National Institute for Health and Care Excellence. Dementia: assessment, management and support. NG97(2025年10月確認)
  10. 警察庁.運転免許の拒否等を受けることとなる一定の病気等について

この記事は精神科医が監修しています。

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