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感染症・炎症性疾患による認知機能障害

感染症・炎症性疾患による認知機能障害

最終更新日:2026年8月27日

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感染症や自己免疫反応が脳・髄膜に及ぶと、物忘れ、混乱、性格変化、幻覚、けいれんなどが急速に現れます。このページでは、HIV関連神経認知障害、自己免疫性脳炎、橋本脳症、傍腫瘍性神経症候群、脳炎・髄膜炎などの特徴、検査、治療、救急受診の目安を解説します。

認知機能低下に発熱・けいれん・急な精神症状が重なるとき

感染症や炎症性疾患による認知機能障害では、数時間から数週で注意、記憶、言葉、行動が変わることがあります。発熱、強い頭痛、けいれん、意識の変動、手足や顔の異常な動き、自律神経の乱れを伴う場合は、慢性の認知症より先に脳炎、髄膜炎、せん妄、脳卒中などを考えます。

自己免疫性脳炎では、感染を思わせる前触れの後、記憶障害や精神症状が前面に出ることがあります。若い人の急な幻覚や興奮、高齢者の数週で進む物忘れのどちらにも起こり得ます。精神科症状として始まっても、けいれん、意識低下、異常運動、発熱や脈拍・血圧の大きな変動が加われば、身体管理のできる医療機関での評価が必要です。

一方、HIV関連神経認知障害や結核・真菌など一部の中枢神経感染症は、数か月以上かけて進む場合があります。発症速度だけで除外せず、免疫状態、感染機会、がん、自己免疫疾患、使用薬、渡航歴を含めて評価します。

感染性と自己免疫性は初期症状が重なり、検査結果がそろう前に治療判断が必要になることがあります。重症の脳炎が疑われるときは、入院下で感染症治療を開始しながら検査を進め、感染の可能性を十分に検討したうえで免疫治療を組み合わせます。

こんな変化はありませんか

  • 数時間から数日で会話がかみ合わなくなり、日時や場所が分からない
  • 強い頭痛、発熱、吐き気、光をまぶしく感じる症状が重なった
  • 今までなかったけいれん、口や手足の繰り返す異常な動きがある
  • 数週のうちに物忘れ、言葉の出にくさ、性格変化が急速に進んだ
  • 幻覚、妄想、激しい興奮、まとまりのない行動が突然始まった
  • 呼びかけへの反応が一定せず、眠り込む時間と興奮する時間を繰り返す
  • 歩けない、片側の手足が動かしにくい、ろれつが回らない
  • 脈拍、血圧、発汗、体温が大きく変動し、呼吸も不安定になった
  • がん治療や免疫を調整する薬の使用中に、新しい神経・精神症状が出た
  • 免疫機能が低下する病気や治療があり、頭痛、発熱、認知の変化が続く

当てはまる項目があっても、それだけで原因を特定できません。ただし、急な意識変化、けいれん、発熱を伴う混乱は外来で経過を見る危険が大きく、救急評価を優先します。高齢者や免疫機能が低下した人では発熱や首の硬さが目立たないことにも注意が必要です。

感染性・自己免疫性・腫瘍関連をどう見分けるか

感染性では病原体が脳や髄膜に侵入し、自己免疫性では免疫反応が神経細胞の受容体やほかの構造を標的にします。傍腫瘍性神経症候群では、がんに対する免疫反応が神経組織にも反応します。いずれも記憶障害、精神症状、けいれんを起こすため、症状だけで三つを明確に分けることは困難です。

発熱、血液・髄液の炎症、病原体のPCRや培養は感染症の手がかりになります。特徴的な発作、MRIでの辺縁系病変、髄液の炎症、神経自己抗体は自己免疫性を支持します。がんの既往、体重減少、特定の神経症候と抗体の組み合わせは傍腫瘍性を考える材料になります。ただし、感染症でも自己抗体が検出されることがあり、自己免疫性脳炎でもMRIや髄液が初期にほぼ正常な例があります。

アルツハイマー型認知症など多くの神経変性疾患は、意識が保たれたまま月単位から年単位で進みます。炎症性疾患はより速い経過や変動を示しやすいものの、例外があります。薬剤性、代謝性脳症、てんかん、脳卒中、プリオン病、脳腫瘍も似た経過を示すため、広い鑑別を保ちます。

原因別にみる特徴と治療

HIV関連神経認知障害

HIV関連神経認知障害は、HIVと関連して注意、情報処理速度、記憶、実行機能、運動の速さなどが低下する状態の総称です。軽い検査上の低下から、日常生活に影響する神経認知障害、HIV関連認知症まで幅があります。現在は抗レトロウイルス療法によって重いHIV関連認知症が減った一方、治療中にも軽い認知上の困りごとがみられます。

診断では、HIVの治療状況とウイルス量、過去の免疫低下、認知機能と生活機能を確認します。同時に、うつ病、睡眠障害、薬剤、アルコール・ほかの物質、血管リスク、加齢性の認知症、日和見感染症や中枢神経リンパ腫などを除外します。HIV関連神経認知障害は除外診断の性格が強く、認知検査だけで確定はできません。

治療の土台は、感染症専門医のもとで有効な抗レトロウイルス療法を継続し、ウイルス抑制と服薬継続を確認することです。治療中に悪化する場合は、血液と脳脊髄液でウイルスの状態が異なる「髄液ウイルス学的エスケープ」、薬の副作用、別の脳疾患を専門的に再評価します。検査と相談では本人の同意、守秘、偏見を生まない説明が欠かせません。

自己免疫性脳炎

自己免疫性脳炎は、免疫反応が脳の機能を乱す疾患群です。多くは三か月以内の亜急性経過で、短期記憶障害、意識変化、精神症状、けいれんのいずれかが現れます。抗NMDA受容体脳炎では精神症状、異常運動、意識・自律神経・呼吸の障害が重なることがあり、抗LGI1抗体脳炎では短い特徴的な発作、記憶障害、低ナトリウム血症が手がかりになることがあります。

診断は臨床経過、神経診察、MRI、脳脊髄液、脳波、血液・髄液の神経自己抗体を組み合わせ、感染症、代謝異常、薬物、てんかん、腫瘍、精神疾患を除外します。既知の抗体が陰性でも、一定の臨床基準と検査所見を満たす例があります。一方、血清だけの弱い抗体陽性を根拠に診断すると誤診につながるため、抗体の種類に応じて髄液との整合性を確認します。

重症例は入院し、感染性脳炎を想定した治療を続けながら原因検索を進めます。感染を適切に除外した後、ステロイド、免疫グロブリン大量静注、血漿交換などの初期免疫治療を病型と重症度に応じて検討し、腫瘍が関係すればその治療も行います。呼吸障害、治りにくいけいれん、自律神経の不安定さには集中治療が必要です。

橋本脳症

橋本脳症は、自己免疫性甲状腺疾患に関連して使われてきた、まれで診断の難しい脳症の呼び名です。意識変化、認知機能低下、けいれん、ミオクローヌス(瞬間的な筋のぴくつき)、幻覚、精神症状、脳卒中に似た発作などが報告されています。甲状腺ホルモン値が大きく乱れていない人にも起こるとされています。

抗甲状腺抗体は一般人口や甲状腺疾患でも陽性になるため、陽性だけで橋本脳症を確定できません。特異的な診断マーカーは確立しておらず、中枢神経感染症、ほかの自己免疫性脳炎、代謝性脳症、腫瘍、てんかんなどを十分に調べる必要があります。「ステロイドで良くなった」という経過だけを診断根拠にすることにも注意します。

専門医が臨床像と除外診断から可能性を判断し、免疫治療を検討します。治療反応にはばらつきがあり、再発例も報告されています。甲状腺機能低下症そのものによる認知・気分症状とは治療が異なるため、甲状腺ホルモン値と脳炎所見を分けて評価します。

傍腫瘍性神経症候群

傍腫瘍性神経症候群は、がんの転移や圧迫ではなく、がんを標的とする免疫反応が神経系にも及ぶ病態です。短期記憶障害、けいれん、気分・行動変化を示す辺縁系脳炎のほか、小脳失調、感覚障害、筋力低下など多様な症候があります。神経症状が、まだ見つかっていないがんの最初の手がかりになることもあります。

診断は神経症候の型、神経自己抗体、がんの有無と種類、時間的な関係を組み合わせます。抗体にはがんとの結びつきが強いものと中等度のものがあり、抗体陽性だけで因果関係を決めません。既知のがんがある人でも、転移、感染症、治療薬の神経毒性、代謝異常、脳卒中を区別します。

治療は、がんの検索と治療を急ぎながら、病型に応じて免疫治療、けいれんへの治療、リハビリテーションを組み合わせます。神経細胞内の抗原を標的とする病型など、免疫治療への反応が限られるものがあります。がん治療と神経症状の治療を腫瘍科・神経内科などが連携して進めます。

脳炎

脳炎は脳実質に炎症が起こる状態で、ウイルスなどの感染性と、自己免疫性を含む非感染性に分かれます。発熱、頭痛、意識・行動の変化、けいれん、言葉や記憶の障害、片麻痺などが主な症状です。単純ヘルペス脳炎は治療開始の遅れが重い後遺症や生命に関わるため、疑った段階からの迅速な対応が必要です。口唇ヘルペスが見当たらない場合もあります。

入院下で血液、MRI、脳脊髄液PCR、脳波などを行います。検査初期には病原体が検出されにくい場合があり、最初の陰性結果だけで治療を止める判断はしません。単純ヘルペス脳炎が疑われるときは、確定を待たず静脈内アシクロビルを開始するのが基本です。ほかのウイルスや細菌では病原体と免疫状態に合わせて治療を選びます。

髄膜炎

髄膜炎は、脳と脊髄を包む膜に炎症が起こる状態です。発熱、強い頭痛、首の硬さ、吐き気、光への過敏が典型で、混乱、意識低下、けいれんを伴えば認知機能の問題として見えることがあります。高齢者、乳幼児、免疫機能が低下した人では典型的な症状がそろわない場合があります。

細菌性髄膜炎は医学的緊急事態です。血液培養や脳脊髄液検査は原因特定に重要ですが、検査や搬送のために抗菌薬治療を不必要に遅らせません。治療後も聴力、記憶、言語、けいれん、運動機能に後遺症が残ることがあり、退院後の評価とリハビリテーションが必要になります。

中枢神経感染症など

中枢神経感染症には、単純ヘルペス以外のウイルス、細菌、結核菌、真菌、寄生虫などによる脳炎、髄膜炎、脳膿瘍が含まれます。免疫機能が低下した人では、クリプトコックス髄膜炎、トキソプラズマ脳症、サイトメガロウイルス感染、進行性多巣性白質脳症なども検討します。水痘・帯状疱疹ウイルスは皮疹が目立たなくても中枢神経障害を起こすことがあります。

数週から数か月の頭痛、発熱、体重減少、性格・認知の変化では、慢性髄膜炎や脳膿瘍も鑑別します。免疫を抑える薬、臓器移植、がん治療、HIV、結核との接触、渡航、動物・昆虫との接触などが検査選択に関わります。治療は病原体ごとに大きく異なり、抗菌薬、抗結核薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬などを専門的に選択します。

病原体によっては、同居家族への予防内服、ワクチン、保健所への届出、感染対策が必要です。家族が自己判断で抗菌薬を飲んだり、患者を一律に隔離したりせず、診断した医療機関と公的機関の案内に従います。

医師が急いで確認する検査

検査の目的は、治療を急ぐ感染症、脳卒中、けいれんなどを先に見つけ、同時に自己免疫性・腫瘍関連の可能性を絞ることです。重症度に応じて呼吸・循環を安定させ、検査結果を待つ間にも必要な治療を開始します。

経過と神経所見から緊急度を決める

いつ最後に普段どおりだったか、発熱や感染の前触れ、頭痛、けいれん、精神症状、記憶の変化がどの順に出たかを確認します。がん・自己免疫疾患・HIVの既往、免疫を抑える薬や免疫チェックポイント阻害薬、最近の感染症、ワクチン、渡航、薬物・アルコールも診断材料です。

診察では意識、注意、言語、記憶、髄膜刺激徴候、眼球運動、筋力、感覚、反射、歩行、異常運動を確認します。発熱、酸素化、血圧・脈拍の変動、皮疹も重要です。けいれんが止まって見えても脳内で続く非けいれん性てんかん重積があるため、反応の悪さが続くときは脳波を検討します。

MRI・脳脊髄液・脳波が担う役割

血液検査では炎症、電解質、肝・腎・甲状腺機能、血糖、感染症、自己免疫の手がかりを調べ、重症感染が疑われれば血液培養を行います。頭部CTは出血や強い脳圧上昇の危険を迅速に評価し、MRIは側頭葉・辺縁系、白質、脳幹などの病変を詳しく見ます。初期MRIが正常でも脳炎を完全に除外できません。

脳脊髄液では細胞数、蛋白、糖、培養、病原体PCR、必要に応じて自己抗体、細胞診などを調べます。腰椎穿刺の前に画像を優先する状態もあり、検査の安全性を個別に判断します。脳波は目立たないけいれんや脳機能の乱れを捉え、治療の効果判定にも使います。

検査は互いを補うもので、単一のMRI画像、PCR、自己抗体、脳波だけで全例を診断できません。初期結果と症状が合わないときは、採取時期を考慮して再検査や別の検査を行います。

抗体陽性だけで診断しない理由

神経自己抗体は診断に大きく役立ちますが、抗体の種類、測定法、血清と髄液のどちらで検出されたかによって意味が変わります。症状と結びつきにくい低力価の血清抗体や、別の病気に伴う抗体もあります。臨床像と合わない陽性結果は、確認法や専門検査室での再評価を検討します。

抗甲状腺抗体は橋本脳症に特異的でなく、傍腫瘍性抗体もがんとの関連度が抗体ごとに異なります。反対に、既知の抗体が陰性でも自己免疫性脳炎の臨床基準を満たすことがあります。抗体結果を治療反応や除外診断と切り離さず、時間を追って診断を更新します。

治療の中心と回復までの見通し

感染症では原因に応じた治療を急ぐ

感染性脳炎・髄膜炎では、疑われる病原体、年齢、免疫状態、地域の薬剤耐性を踏まえ、静脈内の抗菌薬・抗ウイルス薬などを早期に開始します。細菌性髄膜炎や単純ヘルペス脳炎では、確定検査を待って治療開始を遅らせる不利益が大きいため、検体採取と経験的治療を並行します。

けいれん、脳浮腫、低ナトリウム血症、呼吸・循環の不安定さにも対応します。病原体が判明したら治療を絞り込み、腎機能などに合わせて用量を調整します。抗菌薬を自己判断で中断すると再燃や耐性化の原因になるため、入院中・退院後とも指示された期間を確認します。

自己免疫・腫瘍関連では診断と治療を並行する

自己免疫性脳炎が強く疑われ、必要な検体を採取し感染症を合理的に除外できたら、ステロイド、免疫グロブリン大量静注、血漿交換などを検討します。反応が不十分な場合は診断を見直し、病型に応じて追加の免疫治療を専門医が判断します。免疫治療には感染、血栓、血糖上昇などのリスクがあり、効果には個人差があります。

腫瘍の関連が考えられる場合は、年齢・性別、神経症候、抗体に応じたがん検索を行い、見つかったがんの治療を進めます。腫瘍治療だけ、免疫治療だけに分けず、神経症状、がんの状態、治療による負担を複数科で検討します。

興奮、幻覚、不眠、異常運動には症状を和らげる薬を使うことがありますが、原因治療の代わりにはなりません。自己免疫性脳炎では薬への反応が予測しにくく、意識・呼吸・自律神経への影響を観察しながら慎重に選びます。

急性期後の認知機能とリハビリテーション

感染や炎症が治まった後も、記憶、言語、注意、処理速度、感情の調整、疲れやすさ、睡眠の問題が残ることがあります。回復は数週から数か月以上続く場合があり、退院時の状態だけで最終的な予後を決められません。病型、治療開始までの時間、けいれんや集中治療の有無、脳損傷の程度で経過が変わります。

神経心理評価、作業療法、言語療法、理学療法を必要に応じて組み合わせ、学業・仕事への復帰は負荷を段階的に上げます。けいれん後や判断力が不安定な時期は運転を控え、法令と主治医の指示を確認します。再発する病型では、物忘れ、発作、睡眠・行動の変化を家族も記録し、治療計画に沿ってフォローします。

家族ができる観察と安全確保

家族は、症状が出た日時と順序、発熱、頭痛、けいれんの様子、服薬、最近の感染や治療を短く記録してください。けいれん時は周囲の危険物をどけ、無理に押さえず、口に物を入れません。発作が長い、繰り返す、呼吸や意識が戻らない場合は救急要請が必要です。

混乱や幻覚がある人を一人にせず、運転、火、入浴、階段、薬の重複を避けます。強く訂正して興奮を高めるより、刺激を減らし、短い言葉で現在地と状況を伝えます。ただし、家庭で静かに過ごさせる対応が適するのは、医療者が急性の危険を除外した後です。

感染対策は原因により異なります。マスク、換気、手洗いなど一般的な対策は有用ですが、髄膜炎という病名だけを根拠に家族全員へ予防薬を使うことはありません。濃厚接触者への対応は診断した医療機関や保健所の指示を確認してください。

受診の目安と緊急性

直ちに救急医療機関へ連絡する状態

次の状態では認知症外来の予約を待たず、救急要請を含め、直ちに救急医療機関へ連絡してください。

  • 発熱と強い頭痛、首の硬さ、意識の変化がある
  • 初めてのけいれん、五分以上続く発作、発作を繰り返して意識が戻らない
  • 数時間から数日で会話や行動が急変し、呼びかけへの反応が悪い
  • 急に片側の手足が動かない、ろれつが回らない、激しい頭痛がある
  • 呼吸が不安定、唇が紫色、血圧・脈拍・体温が大きく変動する
  • 幻覚や妄想、激しい興奮によって本人や周囲に危険が迫っている

早めに専門評価へつなげたい変化

数週から数か月で物忘れ、性格、言語、仕事の能率が明らかに変わった、短い意識の途切れや異常運動を繰り返す、がん・自己免疫疾患・HIV・免疫抑制治療を背景に認知機能が低下した場合は、早めに相談してください。症状が一度軽くなっても、反復する発作や急速な進行は重要な手がかりです。

当院での診かた

当院では、緊急性が低く安定している認知機能の変化について、発症時期と速度、精神・神経症状、睡眠、身体疾患、がん・感染症・自己免疫疾患の既往、服薬、日常生活への影響を確認します。院内で認知機能・心理検査と必要な血液検査を行い、慢性の認知症、うつ病、薬剤性なども含めて整理します。

脳炎・髄膜炎や急性脳症が疑われる場合は、外来で検査を完結させず救急医療機関へつなぎます。MRIや高度な画像検査、脳脊髄液検査、脳波、神経自己抗体、感染症・神経内科・腫瘍科の評価が必要なときは、緊急度に応じて連携医療機関へ紹介します。一度の診察や一つの検査で原因が確定しない場合は、経過と追加検査から診断を更新します。

よくある質問

幻覚や性格変化だけでも脳炎の可能性はありますか

可能性はあります。自己免疫性脳炎などでは精神症状が初期に目立つことがあります。発熱、けいれん、意識の変動、記憶の急低下、異常運動、自律神経の不安定さが加わる場合は、精神科診断だけに絞らず救急を含む神経学的評価が必要です。

家族へうつりますか

原因によって異なります。自己免疫性脳炎や傍腫瘍性神経症候群は人から人へ感染しません。感染性髄膜炎でも病原体ごとに感染経路と接触者対応が違います。診断した医療機関や保健所が、予防内服やワクチンが必要な人を判断します。

自己抗体が陰性なら自己免疫性脳炎を否定できますか

完全には否定できません。既知の抗体が見つからない例があり、症状、MRI、髄液、脳波、ほかの原因の除外を組み合わせます。ただし、抗体陰性という理由だけで免疫治療を続けることも適切でなく、臨床基準を満たすかを専門的に再評価します。

甲状腺抗体が陽性なら橋本脳症ですか

陽性だけでは診断できません。抗甲状腺抗体は甲状腺疾患や健康な人にもみられ、脳症への特異性が低い検査です。感染症、ほかの自己免疫性脳炎、代謝異常、てんかん、腫瘍を調べ、臨床経過と検査全体から判断します。

治療後に認知機能は回復しますか

改善する人がいる一方、記憶、言語、疲労、けいれんなどが残る場合があります。病気の種類、重症度、治療開始時期、集中治療中の合併症で回復幅は変わります。急性期後も数か月以上変化することがあり、認知評価とリハビリテーションを続けます。

HIV治療中でも認知機能低下は起こりますか

起こることがあります。まず抗レトロウイルス療法の効果と継続を確認し、睡眠、うつ病、薬剤、物質使用、血管リスク、ほかの認知症や中枢神経疾患を調べます。持続・悪化する場合は、感染症・神経領域の専門評価や脳脊髄液検査を検討します。

参考文献

  1. 日本神経学会監修、「認知症疾患診療ガイドライン」作成委員会編集.認知症疾患診療ガイドライン2026.医学書院、2026.
  2. 日本神経学会・日本神経感染症学会監修.細菌性髄膜炎・単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2026.南江堂、2026.
  3. World Health Organization. WHO guidelines on meningitis diagnosis, treatment and care. 2025.
  4. Graus F, et al. A clinical approach to diagnosis of autoimmune encephalitis. Lancet Neurol. 2016;15:391-404.
  5. Abboud H, et al. Autoimmune encephalitis: proposed best practice recommendations for diagnosis and acute management. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2021;92:757-768.
  6. Graus F, et al. Updated Diagnostic Criteria for Paraneoplastic Neurologic Syndromes. Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm. 2021;8:e1014.
  7. Pempera N, et al. Difficulties in the Diagnostics and Treatment of Hashimoto’s Encephalopathy: A Systematic and Critical Review. Int J Mol Sci. 2024;25:7101.
  8. British HIV Association. BHIVA guidelines on antiretroviral treatment for adults living with HIV-1: 2025 interim update.
  9. National Institutes of Health. Guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in Adults and Adolescents With HIV. Updated 2025.

この記事は精神科医が監修しています。

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