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全般不安症

全般不安症

全般不安症

最終更新日:2026年08月25日

全般不安症は、仕事、健康、家族、お金など複数のことへの心配が長く続き、自分で切り替えにくくなる不安症です。このページでは、普通の心配との境界、症状、似た病気との違い、診断、認知行動療法や薬による治療、仕事・学校での対応、受診の目安を順に説明します。

心配は、危険に備えたり、問題の解決策を考えたりするための自然な働きです。病気として考える境界は、心配の内容そのものよりも、広がり、持続、切り替えにくさ、苦痛、生活への影響にあります。

全般不安症では、ひとつの心配が解決しても別の心配が現れ、頭とからだが長時間「警戒モード」にとどまります。動悸、肩こり、頭痛、胃腸の不調、不眠などが前面に出る人もいます。

実際の診療では、うつ病、パニック症、適応反応症、強迫症、身体疾患、薬やカフェインなどの影響を確認し、経過と生活への支障を合わせて判断します。

全般不安症でみられるサイン

次のような状態が何か月も繰り返され、仕事、学校、家事、人間関係に影響しているときは、全般不安症を含む不安症の評価が役立ちます。

  • 仕事、健康、家族、お金、将来など、心配の対象が次々に移る
  • 考えるのをやめようとしても、最悪の展開を何度も想像する
  • 確認や準備に時間がかかり、仕事や家事が進まない
  • 家族や同僚へ何度も「大丈夫か」と尋ね、安心が長続きしない
  • 休んでいるときも気が張り、そわそわして落ち着かない
  • 布団に入ると考えが止まらず、寝つきや眠りの深さが悪くなる
  • 緊張が続いて疲れやすく、集中できない、頭が真っ白になる
  • いら立ちやすくなり、家族や職場で衝突が増える
  • 肩や首のこり、頭痛、動悸、発汗、震え、腹部不快感が続く
  • 失敗を恐れて決断を先延ばしにし、電話、会議、外出などを避ける

該当する項目があっても、項目数だけで診断は確定しません。症状が始まった時期、続き方、現実の負担とのつり合い、身体状態や服薬などを確認する必要があります。

普通の心配と全般不安症の違い

普通の心配は状況に応じて強まり、問題が解決すると弱まりやすい性質があります。全般不安症では、複数の領域へ心配が広がり、止めにくい状態が長く続き、強い苦痛や生活上の支障を伴います。

表は横にスクロールしてご覧ください。

比べる点普通の心配全般不安症適応反応症
心配の中心現実の課題に沿う仕事、健康、家族など複数の領域へ広がる特定できるストレス要因とその結果が中心
切り替え対策や時間の経過で弱まりやすい自分で止めたり切り替えたりしにくいストレス要因から離れると軽くなることがある
続き方状況に応じて一時的多くの日に持続し、慢性的になりやすいストレス要因との時間的な関係が明確
生活への影響多くは役割を保てる睡眠、集中、判断、仕事や家事に支障が出るストレスに関連する場面を中心に支障が出る

この表は見分ける手がかりです。実際には境界が重なり、全般不安症と適応反応症、うつ病などが同時にみられることもあります。

心配・身体症状・行動の変化

心配と思考の特徴

心配は「提出物に誤りがあるか」「家族が病気になるか」「収入が減るか」など日常的な話題から始まります。考え続ければ危険を防げるように感じ、手放しにくくなります。集中力の低下、決断の遅れ、過剰な準備としても現れます。

からだに現れる症状

長く緊張が続くと、落ち着かなさ、疲労、筋肉のこわばり、頭痛、動悸、発汗、震え、口の渇き、吐き気や腹部不快感、寝つきの悪さなどが起こります。身体症状が強い場合は、先に内科を受診する人も少なくありません。

安心確認と回避が生活へ与える影響

予定を何度も確認する、ネットで調べ続ける、家族へ保証を求める、失敗しそうな役割を避ける行動は、その場の不安を下げます。安心が長続きしないと確認が増え、「確認しないと危険だ」という感覚が強まるため、治療ではこの循環も扱います。

診断で確認することと、似た病気との違い

診断の中心は、心配の範囲、制御の難しさ、持続期間、伴う症状、生活への支障を面接で確かめ、他の病気や物質の影響を除いていくことです。

診断基準をどう使うか

DSM-5-TRでは成人の場合、複数の出来事や活動への過剰な不安と心配が少なくとも6か月、多くの日にあり、心配を制御しにくいことを中心に置きます。さらに、落ち着かなさ、疲れやすさ、集中困難、いら立ち、筋肉の緊張、睡眠障害の6項目から3項目以上が伴い、強い苦痛または生活機能の低下があること、物質・薬・身体疾患や他の精神疾患でよりよく説明されないことを確認します。

ICD-11は、特定の状況に限られない強い不安、または日常生活の複数領域への過剰な心配と関連症状が、多くの日に少なくとも数か月続くことを求めます。DSM-5-TRとICD-11では期間や症状数の表現に違いがあります。診断体系は判断の共通枠組みとして使い、年齢、文化、現実に置かれた状況も考慮します。

GAD-7などの質問票は、症状の拾い上げや症状の程度の経過を見る助けになります。点数は診断材料の一部であり、最終的には面接と鑑別を合わせて判断します。

初診で医師が確認していること

  • 何を、どのくらいの頻度で心配するか:複数の領域へ広がる心配か、特定の対象に限られる不安かを見ます。
  • いつから続き、どの程度止めにくいか:一時的なストレス反応と、持続する不安症を区別します。
  • 睡眠、集中、欠勤、家事への影響:症状数に加えて、治療の必要性と強度を判断します。
  • 突然の強い動悸や恐怖があるか:パニック発作とパニック症の併存を確認します。
  • 睡眠が少なくても活動的で、気分が高揚した時期があるか:双極症の可能性を検討し、薬の選び方に反映します。
  • 飲酒、カフェイン、サプリメント、処方薬の状況:物質や薬による不安、離脱症状、相互作用を見ます。

似た病気との違い

パニック症:突然始まり短時間で強くなるパニック発作と、次の発作への不安が中心です。全般不安症は、日常のさまざまな話題への持続的な心配が中心です。両方が併存することもあります。

適応反応症:特定できるストレス要因への反応が中心です。全般不安症では、心配が複数の生活領域へ広がり、仮定上の悪い出来事まで考え続けます。発症前の状態とストレスから離れた場面での変化が手がかりになります。

強迫症:望まないのに入り込む考え、イメージ、衝動と、それを打ち消す確認や儀式が中心です。全般不安症の心配は日常の出来事を扱い、「考えておく方が安全」と感じられることが多い点に違いがあります。

身体疾患・薬剤・睡眠の確認

動悸、震え、発汗、疲労、集中困難は、甲状腺機能亢進症、不整脈、貧血などでも起こります。カフェインや刺激作用のある薬、アルコールやベンゾジアゼピン系薬の離脱、睡眠不足も不安を強めます。いびき、無呼吸、日中の強い眠気があれば睡眠時無呼吸症候群も検討します。まず当院で症状と経過を整理し、診察と当院で実施できる範囲の検査を行います。心臓や甲状腺などの詳しい検査・治療が明らかに必要な場合に限り、適切な診療科と連携します。

原因と、不安が続く仕組み

全般不安症は、遺伝的な影響、気質、ストレス経験、現在の環境、睡眠や身体状態などが重なって発症すると考えられています。単一の脳内物質や出来事だけで説明できる段階には至っていません。

心理面では、不確実さを強い危険として受け取り、心配、確認、回避を続ける循環が注目されています。確認や回避で一時的に楽になると、自分で対処できるかを確かめる機会が減ります。これは有力な治療モデルであり、原因の重なり方には個人差があります。

全般不安症の治療

治療は、症状の程度、生活への支障、併存疾患、本人の希望に応じて、病気の理解と経過観察、認知行動療法を中心とする心理的治療、薬物療法を段階的に選びます。軽い症状にはCBTに基づくセルフヘルプや心理教育が選択肢となり、支障が大きい場合は体系的なCBTまたは薬物療法を検討します。

認知行動療法―心配との付き合い方を変える治療

認知行動療法(CBT)は、心配を完全に消すことより、心配を維持する考え方と行動の循環を調べ、現実的に対処する力を増やします。心配を記録する、解決できる問題と仮定上の心配を分ける、不確実さに少しずつ触れる、確認や回避を減らす、注意を現在の行動へ戻す、といった方法を組み合わせます。

2023年のネットワークメタ解析では、CBTは通常治療より症状を減らし、治療終了後の追跡でも効果を支持する結果が得られました。実施方法や期間はプログラムと状態により異なり、訓練を受けた治療者と目標を共有して進めます。

薬物療法―効果と副作用を見ながら選ぶ

海外の主要ガイドラインでは、薬を希望する場合の第一候補としてSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、次の候補として別のSSRIやSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)が挙げられます。日本で承認されている効能は製剤ごとに異なり、全般不安症への処方が承認適応外となる薬もあります。処方時は承認状況、期待できる効果、副作用、他の選択肢について説明を受けて判断します。

抗うつ薬の効果は徐々に現れ、数週間かけて変化を見ます。2025年のCochrane Reviewでは、37試験、成人12,226人をまとめ、反応率はプラセボより高く、追加で1人が反応するために治療が必要な人数は約7人でした。試験の多くは4~28週間で、重い身体併存疾患がある人は十分に含まれていません。平均的な結果を個人の効果保証としては扱えません。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬は速く効く一方、眠気、判断力や運転能力の低下、転倒、耐性、依存、中止時の離脱が問題になります。WHOは重い急性不安への3~7日という短期使用、NICEは危機時の短期使用に限る方針を示しています。日数の表現には差がありますが、長期の定期使用を治療の中心に置かない点は共通しています。

薬が効いて症状が落ち着いた後も、再燃を防ぐため一定期間続けます。NICEは有効な薬を少なくとも1年間続けるよう勧めていますが、実際の期間は再発歴、残る症状、副作用、希望を踏まえて個別に決めます。

生活上の工夫―治療を支える土台

起床時刻をそろえると睡眠と覚醒のリズムが安定し、寝不足による不安の増幅を抑えやすくなります。カフェインは動悸、震え、不眠を強めるため、摂取量と時刻を記録し、多い場合は徐々に減らします。飲酒は一時的に緊張を下げても、睡眠の質を下げ、翌日の不安や依存につながることがあります。

適度な運動、呼吸法、筋弛緩は緊張を下げる補助になります。心配を一日中続ける人には、心配を検討する時間をあらかじめ区切り、それ以外の時間は目の前の行動へ戻す方法も使われます。これらは治療を支える手段です。症状や生活への影響に合わせて、診察で取り入れ方を一緒に考えます。

どのくらいで良くなるのか、再発をどう防ぐか

改善までの時間には幅があります。治療開始後の数週間は、診断と注意点を確認し、睡眠、心配、生活機能、副作用の変化を追います。数か月かけて、心配に費やす時間、確認や回避、欠勤や作業能率がどう変わるかを評価します。

診断基準にある「6か月」は症状の持続を判断する期間であり、回復に必要な期間とは区別します。経過には波があり、良い時期と悪い時期を行き来する人もいます。寛解(症状がほぼなくなった状態)の後は、CBTで学んだ方法を続け、睡眠不足、カフェイン増加、確認行動、先延ばしなど自分の早期サインを把握します。

抗うつ薬に反応した不安症を対象とする再発予防試験のメタ解析では、最長1年の追跡で、薬を中止した群は継続した群より再発が多い結果でした。中止時期は症状が安定した期間と再発リスクを見ながら決め、段階的に減量します。

仕事・学校と利用できる可能性のある制度

続ける、負担を減らす、休むという選択

仕事や学校を続けるかは、診断名だけで決めず、睡眠、集中力、判断力、欠勤の程度、課題を終えた後の疲労を基準に考えます。働きながら治療できる場合は、締切や同時進行の業務を減らす、確認経路を一本化する、通院時間を確保するなど、負荷を具体的に調整します。

医療費や休業中の生活を支える制度

継続的な精神科通院が必要な場合、自立支援医療(精神通院医療)で自己負担が軽減される可能性があります。指定医療機関の利用、所得区分、自治体での申請などの条件があります。

会社の健康保険に加入し、業務外の病気で働けず、給与を十分に受けられないなどの要件を満たす場合は、傷病手当金の対象となる可能性があります。長期にわたり生活機能が大きく制限される場合は、精神障害者保健福祉手帳や障害年金が検討されることもあります。各制度は、病状、生活機能、加入状況などの条件に基づいて審査されます。

気になる変化と当院での診かた

診断基準の期間を満たすまで受診を待つ必要はありません。次のような変化が気になった段階で、当院へご相談ください。こころと身体の症状をまとめて確認します。

  • 心配を自分で切り替えにくく、多くの日に続いている
  • 眠れない、食欲が落ちた、動悸や胃腸症状が続く
  • 集中できず、仕事や学業のミス、遅刻、欠勤が増えた
  • 確認や検索に長い時間を使い、家事や予定が進まない
  • 不安を抑えるための飲酒や頓服薬が増えている
  • 家族や周囲から、心配やいら立ちの増加を指摘された

当院での診かた

当院では、心配の内容と強さ、始まった時期、その前後の出来事、これまでの経過、睡眠、仕事・学校・家庭生活、身体疾患、服薬、カフェインや飲酒、他の精神疾患の可能性を確認します。身体症状が目立つ場合は、内科的な評価の必要性も検討します。

よくある質問

Q1. 全般不安症は自然に良くなりますか?

軽い症状は、負担が減ることや睡眠の回復で弱まる場合があります。一方、全般不安症は強さが揺れながら長く続くこともあります。生活への支障がある、何か月も続く、範囲が広がる場合は、自然経過だけに任せず評価を受ける選択が現実的です。

Q2. 心配性な性格や考えすぎと、どう違いますか?

境界は、性格の名前よりも、心配を切り替えられるか、苦痛と身体症状がどの程度か、生活をどれほど妨げているかで判断します。生活を保てているように見えても、以前より心配が増えた、気持ちを切り替えにくいと感じる段階からご相談いただけます。

Q3. 薬を飲まずに治療できますか?

認知行動療法は、薬を使わない有効な治療選択肢です。症状が軽い場合は心理教育やCBTに基づくセルフヘルプから始めることもあります。支障が大きい場合、うつ病などが併存する場合、心理的治療を受けにくい場合は、薬の利点と不利益も比較します。

Q4. GAD-7で高得点なら診断されますか?

GAD-7は症状のスクリーニングと症状の程度評価に役立ちます。高得点の背景に、別の不安症、うつ病、身体疾患、薬や物質の影響があることも考えられるため、診断には面接と鑑別が必要です。

Q5. 仕事は休んだ方がよいですか?

休職の要否は個別に判断します。無理なく働けるか、睡眠と集中が保てるか、業務調整で回復できるかを見ます。欠勤や重大なミスが増え、休んでも回復せず、運転や危険作業に不安がある場合は、休職を含めて医師や職場と相談します。

Q6. 家族はどのように対応すればよいですか?

参考文献

  1. 国立精神・神経医療研究センター こころの情報サイト「不安症」 公式ページ
  2. American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition, Text Revision (DSM-5-TR). American Psychiatric Association Publishing; 2022.
  3. World Health Organization. Clinical Descriptions and Diagnostic Requirements for ICD-11 Mental, Behavioural or Neurodevelopmental Disorders. 2024. 公式ページ
  4. National Institute for Health and Care Excellence. Generalised anxiety disorder and panic disorder in adults: management. CG113. Updated 2020; maintenance update 2024. 公式ガイドライン
  5. Papola D, et al. Psychotherapies for Generalized Anxiety Disorder in Adults: A Systematic Review and Network Meta-Analysis of Randomized Clinical Trials. JAMA Psychiatry. 2024;81(3):250-259. doi:10.1001/jamapsychiatry.2023.3971. DOI
  6. Kopcalic K, et al. Antidepressants versus placebo for generalised anxiety disorder. Cochrane Database Syst Rev. 2025;1:CD012942. doi:10.1002/14651858.CD012942.pub2. DOI
  7. Batelaan NM, et al. Risk of relapse after antidepressant discontinuation in anxiety disorders, obsessive-compulsive disorder, and post-traumatic stress disorder: systematic review and meta-analysis of relapse prevention trials. BMJ. 2017;358:j3927. doi:10.1136/bmj.j3927. DOI
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