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身体症状症・病気不安症

身体症状症・病気不安症

最終更新日:2026年09月06日

約16分で読めます

身体症状症は、痛みや動悸などの身体症状と健康への心配が生活を大きく占める状態です。病気不安症では、目立つ症状が少なくても病気への恐れが続きます。このページでは、よくある心配との境界、両者の違い、身体の病気や不安症との見分け方、診断、治療、仕事や生活の整え方を説明します。

身体の違和感を調べることや、検査結果を気にすることは自然な健康管理の一部です。身体症状症や病気不安症では、その心配に長い時間を使い、何度確認しても安心が短く、仕事や家事、外出、人との会話まで影響が広がります。

身体症状症の診断は、身体の病気が見つかったかどうかだけで決まりません。身体の病気と身体症状症が同時に存在することもあります。医師は症状の経過を確認しながら、症状への注意、意味づけ、確認行動、生活への影響を総合します。

病名が分からなくても受診できます。「身体の症状を軽く扱われそう」という心配も、そのまま診察でお話しください。症状が軽いうちの相談も受け付けています。

身体や健康のことが頭から離れないときのサイン

次のような変化は、身体症状症や病気不安症を考える手がかりです。身体の感じ方、心配の内容、確認する行動が互いに影響します。

  • 痛み、しびれ、めまい、動悸、胃腸の不調、だるさなどが続き、その意味を一日中考える
  • 検索結果を読むうちに重い病気が次々と気になり、眠る時間まで短くなる
  • 体温、脈、血圧、皮膚、便などを一日に何度も確認する
  • 検査結果を聞いた直後は落ち着くものの、別の病気や見落としが気になり始める
  • 家族や友人へ同じ心配を繰り返し尋ね、安心できる答えを探す
  • 身体への負担が心配で、通勤、運動、入浴、旅行、食事などを控える
  • 病名を告げられることへの恐れから、健康診断や診察を先延ばしにする
  • 仕事中も身体を観察し、会議や作業の内容が頭に入りにくい
  • 複数の診療記録や検査結果を何度も読み返し、違いを探し続ける
  • 症状を理解してもらえないという思いが強くなり、家族との会話が症状の話題に偏る

項目数は相談のきっかけとして使います。診断では、症状の種類だけでなく、続き方、心配に使う時間、確認や回避、生活への影響、身体面の評価を合わせて判断します。

身体症状症と病気不安症は何が違うのか

両者は健康への強い心配を共有します。身体症状症ではつらい身体症状が前面に出やすく、病気不安症では病気になっている、または今後なるという恐れが中心です。

身体症状症は身体症状と、それに向ける注意が中心

身体症状症では、痛み、疲れ、動悸、めまい、胃腸症状などが苦痛となり、症状の深刻さを繰り返し考える、健康への不安が続く、調べることや受診準備に多くの時間を使うといった状態が続きます。症状の部位や強さは変化する場合があります。

検査で病気が確認された人にも生じます。身体疾患による症状と、それに関連する考え・感情・行動の両方を診療で扱います。

病気不安症は病気への恐れが中心

病気不安症では、身体症状が目立たない、または軽い一方で、重い病気を患っているという心配が続きます。小さな皮膚の変化や一時的な動悸を病気の徴候と受け取り、検索、自己チェック、周囲への確認を重ねる人がいます。反対に、結果を知ることが怖くて診察や検査を避ける人もいます。

以前は「心気症」と呼ばれることがありました。現在のDSM-5-TRでは病気不安症、ICD-11では心気症(健康不安症)という名称が使われ、分類上の範囲には違いがあります。

自然な健康上の心配との境界

体調が変わったときに調べたり、結果を待つ間に心配したりする反応は多くの人に起こります。区別の手がかりは、心配の強さだけよりも、安心が続く時間と生活への広がりです。説明を理解すると普段の生活へ注意を戻せる状態に比べ、身体症状症や病気不安症では確認が次の確認を呼び、心配が毎日の予定を決めるようになります。

体調の変化と心配の経過を時間に沿って確認すると、自然な反応やほかの不安症との関係を整理しやすくなります。

なぜ症状や不安が続くのか

原因は一つに決められません。身体感覚への注意の向きやすさ、感覚を脅威として受け取る傾向、過去の病気の経験、家族の健康問題、ストレス、睡眠、身体疾患、うつや不安などが複雑に関係すると考えられています。

不安が高まると、動悸、発汗、筋肉の緊張、胃腸の動きなども変わります。その変化を病気の証拠と受け取ると、さらに身体へ注意が集中します。検索や測定、家族への確認は一時的な安心をもたらしますが、確認する習慣が「確認しないと対処できない」という学習を強め、次の不安を起こしやすくします。

身体感覚の増幅や脳の予測処理は研究段階です。診療では、現在の症状を保っている循環と変えられる部分を見つけます。

診断では症状・心配・行動の循環を確認する

診断の中心は、身体症状や病気への心配がどのように続き、確認や回避と結びつき、生活へどの程度影響しているかを明らかにすることです。身体の病気、服薬、睡眠、ほかの精神症状も同時に確認します。

診断体系が重視すること

DSM-5-TRの身体症状症では、苦痛または生活上の支障を伴う一つ以上の身体症状があり、症状の深刻さについての持続的な考え、健康への強い不安、症状へ費やす過度な時間や労力のうち少なくとも一つが続くことを重視します。症状の状態は典型的に6か月以上続きます。

病気不安症では、重い病気を患う、または発症するというとらわれ、強い健康不安、繰り返す確認行動または受診を避ける行動が中心です。DSM-5-TRの6か月という期間は診断分類の目安です。相談を始めるために6か月待つ必要はなく、心配が生活を狭め始めた時点で受診できます。

ICD-11の身体的苦痛症は、苦痛を伴う身体症状と、それに向く過度な注意が続くことを中心に置きます。DSMとICDでは名称や境界が少し異なります。

初診で医師が確認していること

初診の質問には、次のような診断上の目的があります。

  • 症状の始まり、変化、一定か波があるか:身体面の評価と経過の整理に使います。
  • 何が一番心配か、どの病気を想像するか:身体症状への苦痛と病気への恐れを分けます。
  • 検索、測定、鏡での確認、家族への質問の頻度:安心を求める行動の循環を見ます。
  • 避けている活動や場所:不安が仕事、運動、食事、外出をどの程度狭めたかを確認します。
  • これまでの診察や検査:必要な確認を選びます。
  • 気分、幅広い心配、突然の発作、繰り返す考え:うつ病やほかの不安症・強迫症との重なりを見ます。
  • 睡眠、カフェイン、飲酒、処方薬、市販薬、サプリメント:身体感覚へ影響する要因を確認します。

検査で分かることと診断の進め方

単一の血液検査、画像検査、心理検査で身体症状症や病気不安症を確定する方法はありません。問診票は症状や健康不安の程度を共有し、経過を追う補助として使います。点数は診断そのものより、診察で詳しく尋ねる領域を見つける役割があります。

身体面の検査は、症状の特徴、持病、服薬、これまでの結果に応じて選びます。検査の理由、結果から分かる範囲、次に見る点を共有すると、不安と検査の循環を整理しやすくなります。

似た状態との違い

身体への不安は、多くの身体疾患や精神疾患で起こります。医師は「心配しすぎ」と一括せず、心配の対象、時間経過、発作性、確認行動、気分との関係を見て治療方針を組み立てます。

身体の病気がある場合

甲状腺機能の変化、貧血、不整脈、呼吸器・消化器・神経の病気、慢性の痛み、薬の作用などは、不安につながる身体感覚を生じさせます。診察では、身体面の変化と、症状への注意や行動が生活へ与える影響を一緒に扱います。

全般不安症・パニック症・強迫症との違い

全般不安症では、健康に加えて仕事、家計、家族、将来など複数の領域へ心配が広がる傾向があります。病気不安症では、病気を患っているという恐れが心配の中心です。両方の特徴が重なる場合もあります。

パニック症では、動悸、息苦しさ、めまいなどが急に高まり、発作の再発や起こりそうな場所を恐れることが中心です。身体症状症では症状への注意が持続しやすく、病気不安症では特定の病気を疑う心配が続きます。

強迫症では、望まない考えを下げるために確認や儀式を行います。汚染、加害、戸締まりなど健康以外のテーマもみられ、心配の内容と行動の目的が区別の手がかりです。

うつ病や強い確信を伴う状態との違い

うつ病では、気分や興味の低下、疲労、睡眠、食欲、集中力の変化に伴って身体への心配が強くなることがあります。健康不安だけを扱うより、気分症状を同時に治療することで生活全体を立て直しやすくなります。

病気不安症には「病気かもしれない」という恐れや揺れが残ることが多く、強い確信を伴う状態では反対の情報を受け取っても信念がほぼ動きません。確信の強さ、考えが変化する余地、ほかの体験を確認する理由は、治療の組み立てが変わるためです。

治療は「症状をゼロにする」より生活を取り戻すことを目指す

治療では、身体症状を尊重しながら必要な身体面の確認を行い、健康への心配に費やす時間を減らし、仕事、家事、睡眠、外出などを取り戻すことを目標にします。診療の見通しの共有、認知行動療法をもとにした対応、併存症状への薬物療法などを状態と希望に合わせて組み合わせます。

症状を尊重し、診療の見通しを共有する

どの症状を評価し、今後どの変化を確認するかを共有します。同じ見取り図で経過を追うと、身体面への配慮と不安への治療を両立しやすくなります。

治療では、検索時間が短くなった、会議へ集中できた、散歩を再開できたなど、生活機能の変化も記録します。症状が残る日にも行動を選べることが回復の一部です。

認知行動療法で心配の循環を変える

認知行動療法では、身体感覚、病気だという解釈、不安、確認や回避、その後の一時的な安心という循環を具体的に整理します。そのうえで、検索の回数を段階的に減らす、身体から外へ注意を戻す、確認を少し待つ、避けていた活動を小さく再開するなどを試します。

目的は、不確実さが残っていても日常の行動を選べる力を育てることです。認知行動療法には有効性を支持する研究がありますが、研究対象には幅があり、効果には個人差があります。

薬を使う場合

身体症状症だけを対象とする薬物療法の研究は限られ、薬が治療の中心になるとは限りません。うつ病、全般不安症、パニック症、慢性痛などが重なる場合には、抗うつ薬などを選択肢にします。薬の目的を「すべての身体感覚を消すこと」より、気分、不安、睡眠、痛みを整えて生活上の練習を進めやすくすることに置きます。

吐き気、眠気、便通、性機能などの副作用は身体への注意を強める場合があるため、開始量や変化を丁寧に確認します。効果と負担を一定期間ごとに振り返り、続け方や減量の時期と手順を診察で相談します。

良くなるまでの経過と再び苦しくなったときの備え

経過は、身体疾患や不安・うつ、生活環境によって異なります。心配の仕組みを理解し、数週間から数か月の単位で確認行動や生活機能の変化を見ます。

良くなる過程では、心配に気づいてから検索や測定へ進むまでの選択肢が増えます。再び苦しくなったときに備え、注意が身体へ集中するサイン、減らしたい確認、続けたい日課を記録します。

仕事・学校・家庭での過ごし方

働きながら治療する場合は、負担を調整しながら活動を保ちます。検索する時間帯を決める、測定回数を記録する、休憩後の作業を一つ決める方法が役立ちます。

活動を控える期間が長い人は、短時間の外出や負担の少ない作業から段階をつけます。勤務時間、業務量、対人負担の調整や診断書も相談できます。

家族は、症状の真偽より「今日は何ができたか」「心配が強い時間に何を試すか」を確認し、診察で決めた対応を共有します。

受診の目安と当院での診かた

診断名が決まってから受診する必要はありません。身体の症状と健康への心配が生活を占め始めた段階で、困っている順に話していただけます。

気になり始めた段階が相談のタイミング

  • 身体や病気について考える時間が毎日長くなっている
  • 検索、測定、周囲への確認を減らしたいのに繰り返している
  • 説明を受けても安心が続かず、別の病気が次々と気になる
  • 心配のために仕事、学校、家事、外出、運動を控えている
  • 身体症状に加えて、眠りにくさ、気分の落ち込み、幅広い不安が続く
  • 受診や検査への恐れが強く、健康管理を先延ばしにしている
  • 家族との会話や予定が、体調確認を中心に回るようになった

期間や項目数を満たす前でも相談できます。心配をうまく整理できないときは、「一番困る症状」「一番恐れていること」「一日に何回確認するか」の三つから話すと伝えやすくなります。

当院ではこころと身体を一緒に整理します

当院では、身体症状、始まった時期、これまでの経過と検査、健康への心配、検索や確認、避けている活動、睡眠、気分、仕事・学校・家庭への影響、服薬を必要に応じて確認します。内科診療もあるため、こころと身体を分けずに全体像を整理します。

初回で病名を決めることより、まず現在の困りごとと診療の見通しを共有します。身体の変化を経過に沿って確認しながら、心配の循環を小さくする方法と、取り戻したい生活を一緒に考えます。病名が分からない段階や、症状が軽いうちの受診も歓迎しています。

身体症状症・病気不安症についてよくある質問

症状は気のせいなのでしょうか?

症状も不安も、本人が実際に体験しているものです。脳と身体は双方向に影響し、不安や注意の集中によって動悸、痛み、胃腸の動きなどが強く感じられることがあります。診療では症状を尊重し、身体面の確認と心配の循環への治療を並行します。

身体の病気があっても身体症状症になりますか?

はい、身体の病気と身体症状症は同時に起こります。診断で重視するのは、病気の有無だけより、症状への考えや不安、確認行動に多くの時間を使い、生活への負担が広がっているかです。新しい変化は身体面から評価し、心配への対応も続けます。

検査を繰り返せば安心できるようになりますか?

検査は、症状に応じた身体面の確認に役立ちます。一方、健康不安が強いと、結果を聞いた直後の安心が短く、次の検査や別の病気への心配が始まることがあります。検査の目的と範囲を共有し、確認したくなる循環そのものにも取り組む方法が現実的です。

薬を飲まずに治療できますか?

はい、診療の見通しの共有や認知行動療法をもとにした対応から進める選択があります。薬は、うつ、不安、パニック、痛み、睡眠の問題が重なるときに検討します。希望、期待する効果、副作用への心配を診察で話し合って決めます。

自然に軽くなることはありますか?

一時的な健康不安は、体調の回復や検査結果の理解とともに軽くなることがあります。検索や確認が増え、生活が狭くなる状態では、その循環を整理する治療が役立ちます。症状が軽いうちでも、困り方を言葉にする目的で受診できます。

家族はどのように接すればよいですか?

身体症状と不安を否定せず、困っている生活上の場面を聞いてください。同じ確認へ毎回答えることより、検索を待てた時間や再開できた活動に注目すると治療を支えやすくなります。家族だけで対応を決めにくいときは、接し方も診察で相談できます。

参考文献

  1. World Health Organization. Clinical descriptions and diagnostic requirements for ICD-11 mental, behavioural and neurodevelopmental disorders. 2024.
  2. American Psychiatric Association. What is Somatic Symptom Disorder? Reviewed July 2024.
  3. American Psychiatric Association. Somatic Symptom Disorder: DSM-5 fact sheet.
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  5. van Dessel N, et al. Non-pharmacological interventions for somatoform disorders and medically unexplained physical symptoms in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2014;CD011142.
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  7. Axelsson E, Hedman-Lagerlöf E. Cognitive behavior therapy for health anxiety: systematic review and meta-analysis. Expert Rev Pharmacoecon Outcomes Res. 2020;20:663-676.
  8. Tyrer P, et al. Cognitive-behaviour therapy for health anxiety in medical patients: a randomised controlled trial with outcomes to 5 years. Health Technol Assess. 2017;21(50).

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この記事は精神科医が監修しています。

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